ペーニャ・トーレス・マカレナでの2回目のカンテシリーズは包括的で、あまりの完ぺきなプログラムに疲れてしまうほど。このシリーズでは、普段はソリスタとして見かける機会の少ないそれぞれの歌い手が自身のスタイルを提案し、このセビージャのペーニャの愛情を受け朝鮮の場となっている。
今回登場したのはマヌエル・パハレス。踊り伴唱がメインだが、ソリスタとしての素養を試しに来た。古代のヒーローかのように、神々の後押しを受けて名を知らしめるべく大きな城壁に立ち向かっていくような姿だった。
リサイタルはロマンセから始まり、彼の故郷を感じさせながらも、見かけによらずソニケテ(フラメンコらしいリズム感)満載のダニ・ボニージャと、アルテと愛嬌の塊のロベルト・ハエンのパルマ伴奏も相まって、カディスの香りもするようだった。
ギター伴奏にはフアン・マヌエル・モレノ。次のカンテ、ソレア・ポル・ブレリアでは彼の献身的な伴奏とノリが良く伝わった。
次のマラゲーニャ・イ・アバンドラオでは、ガジャリトのマラゲーニャを歌うベルナルド・デ・ロス・ロビートスを彷彿とさせた。「魚たちは心を痛めて死んでしまった(los peces mueran de pena)」のレトラを歌い、抑揚の効いたアバンドラオで締めた。
続くはソレア・アポラだが、最初の節を高いキーで歌ったことで、次の節もそのキーを保たなければいけなくなり、元々のスタイルの効果的なところが輝きを失い、少々気が逸れてしまった。その後はトリアナのソレアを歌った。戦いに挑むには気持ちを高め、トロイアの槍を喉から投げるかのようにリスクを背負う気合が必要だ。
第二部はカンテス・デ・レバンテから始まる。次のシギリージャはこの日一番の出来だった。「自分の舌が不満を言うと分かっていたら、舌を切って黙らせただろうに(Si yo supiera la lengua, que de mí murmura, yo la cortaría por el medio, y la dejara muda)」というレトラが印象的だった。高音が良く伸びる。締めはフアン・フンケーラのスタイルだったと思う。とても素晴らしく、遠くから見ると王冠が見えるようだった。
次のアレグリアスでは低音と高音の行き来を繰り返し、音域の広さを示した。第一部よりとても良かった。ブレリアとハレオ・エストレメーニョで締め括り、華やかなフィン・デ・フィエスタへの時間も残した。
曲ごとに良くなっていく彼自身の葛藤が見えた。アキレスの強さが彼に味方するか、はたまたウリセスのずる賢さが彼に光を与えるか、今後を見守ろう。
文:ホセ・カルロス・カブレラ・メディナ
訳:瀬戸口琴葉
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