感動的な今年のアランケ・ロテーニョで大活躍のカンカニージャ

 8月12日に第40回「アランケ・ロテーニョ」フラメンコ・フェスティバルが開催された。こういった夏のフラメンコ・フェスティバルを途切れることなく毎年献身的に開催し続けている数少ない町の一つで、今年は40回目という節目の年となったが、これほど長く続けるのは簡単なことではない。


今回のフェスティバルでは経験豊富で、レパートリーも多く、カンテの知識も豊富なカンカニージャ・デ・マラガが圧倒的だった。観客にカンテの授業をするかのように素晴らしいカンテを披露しただけでなく、シリアスなカンテもまるでなんでもないように、愛嬌を持って歌った。こんな風に歌うのは非常に難しいことだ。

*ペーニャ・フラメンカ・ビエホ・アグヘータの役員によるベルガロ氏への40周年記念の盾の授与の様子。写真はビバ・ロタによる。


今回は第40回という記念の年だったので、特に感動的だった。町全体とビエホ・アグヘータのペーニャによる、このたゆみない尽力によって、良きフラメンコを守り、支える巨匠たちの名が並んだ。アントニオ・ベルガロはフェスティバル当日もその前のイベントでも、長年築き上げられたもの、町の人たちからの愛とその評判を、シンプルにまとめ上げていった。多くの困難に苦しみながらそれでも本当に信じるものを追い続けたこの世代により大きな教訓が残されている。


*左からカンカニージャ・デ・マラガ、エル・ゴメス・デ・ヘレス、アナベル・バレンシア。第40回アランケ・ロテーニョの楽屋にて。写真はセベ・イスキエルドによる。


この日のフェスティバルはカンカニージャだけではなかった。弱冠10歳のマヌエル・モンヘは屈託のない、その若い才能でフェスティバルの幕開けを飾った。その仕草や見た目と、完ぺきな音程に観客は大盛り上がりだった。フェスティバルで司会をした際にも言ったように、ペドロ・ガリード“エル・ニーニョ・デ・ラ・フラグア”やその前のエセキエル・ベニテスを彷彿とさせる様子だった。


リンクから彼のパフォスのビデオをお届けしようーマン。


続いてカンカニージャ・デ・マラガが登場。彼については多くを語る必要もないだろう、ただただ脱帽といったところだ。以下のリンクから彼のティエント、シギリージャ、ニーニョ・デ・ラ・カルサーダのファンダンゴや、素晴らしいコンパス感とフラメンコ風“ムーンウォーク”入りのブレリアのパタイータなどをご覧いただける。いつも通り、成績はA+。ギターにはフリオ・ロメーロ、カンカニージャのカンテがより輝くような、立派な伴奏だったことを特に皆さんにお伝えしたい。


(先程のリンクの41分辺りから)


その後に続いたのはバイレのマリア・モンターニョ。彼女はフラメンコのバイレにおいて一番尊敬する踊り手のマティルデ・コラルの言葉を胸に深く刻んでいると言う。それは「踊り手になるためには自分らしくあること、しっかりとした研鑽を積み、自分の向かうべき指針を持つこと」というものだ。


*超若手の踊り手マリア・モンターニョ、フェスティバルの際の楽屋にて。写真はセベ・イスキエルドによる。


彼女はマルチェーナ、モロン、ラ・リネア、エステポナ、ヘレスなどで出演経験があり、今回のロタのフェスティバルではその「紹介状」を提出し、渾身のパフォーマンスを披露しにやって来た。どの演目も良く踊れていて、またバックミュージシャンの人選も良かった。中でもカンテのマヌエル・ペラルタはあまり世に出ていないようだが、個性があり、カンポ・デ・ヒブラルタルのペーニャがいつも呼んでいるが、その何カラットのも輝きを持つ彼のフラメンコを楽しむために、どんなペーニャから声がかかってもおかしくないほどの歌い手だ。

≪link Maria Montaño≫


残念ながらすべてが完ぺきというわけにいかないのが世の常。アナベル・バレンシアのパフォーマンスは悪くなかったが、バックのメンバーのせいで集中出来てないように見えた。パルメーロの一人がパフォーマンスの最中に交代するという出来事もあった。ギター伴奏のクーロ・バルガスは歌い手にとって難しいそのような状況を忘れさせる程の素晴らしい伴奏だった。

≪link Anabel Valencia≫(16分辺り)


そして最後の大波レジェス・カラスコの登場だ。彼女はスペイン版「ゴッド・タレント」で優勝しただけでなく、25歳以前にラ・ウニオンのコンクールでランパラ・ミネーラを獲得しており、今回のフェスティバルへの出演の期待値は非常に高かった。最後の登場だった彼女の出番が始まったのはもうかなり夜遅かった。自分流の解釈とコプラ寄りの表現も見られながら、フアニート・バルデラマを彷彿とさせるような、はたまたマノロ・カラコルやニーニャ・デ・ロス・ペイネスを思わせるような歌いっぷりであった。まだ若いのにとてもプロフェッショナルなパフォーマンスで、期待を裏切らなかった。ギター伴奏にはこちらも素晴らしいニーニョ・セベ。ご覧のようにこの日のギター伴奏は非常にレベルが高かった。

こちらからレジェス・カラスコのパフォーマンスをご覧いただける。

≪link Reyes Carrasco≫


最後にこのフェスティバルの司会を、私を信頼して託してくれたペーニャ・エル・ビエホ・アグヘータの関係者の皆さんにお礼を申し述べたい。大変光栄だし、とても嬉しかった。


良いアーティストがいつもそうであるように、「レス・イズ・モア(より少ないことは、より豊かである)」を体現したカンカニージャ・デ・マラガのパタイータと、セベ・イスキエルドによる当日の写真を以下からご覧いただける。

≪link fotos de Severino Izquierdo≫


文:ホセ・カルロス・カブレラ・メディナ

訳:瀬戸口琴葉


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