エンリケ・エル・エストレメーニョとアニスの禁断症状

 

エンリケ・エル・エストレメーニョ曰く、マヌエル・トーレは喉を温めるために指二本分ほどのアニスを飲んでいたとのこと。ただし、その舞台はフランス・ニームのフェリアのバルのカウンターの様子とは異なった状況だったことは確かだろう。


セビージャのペーニャ・ツアー企画の一つとして、今回はトーレス・マカレナにて、エンリケ・エル・エストレメーニョのリサイタル開催となった。この企画はフラメンコマニアで最近亡くなったマノロ・エレーラに捧げられたものであった。彼についてはマヌエル・ベラ・エル・キンカージャによる過去の年代記を参照いただきたい。

エンリケ先生の伴奏はアントニオ・モジャ。その日のアントニオの伴奏は少々やる気が無いように窺えた、すべてが「お約束」だったような印象。フラメンコ界において偉大なギタリスト、アントニオのトケは、かつて、より音色がはっきりとしていた頃を彷彿とさせる。エンリケは1曲目にトリージャを歌うが、現在歌われる機会が少ないこの曲種は非常に興味深い。続いてトナとコリード。

その後には、メジソのスタイルのマラゲーニャ。一節目の低音が少々不調だったが、二節目のカテドラルの丸天井のような高音部分では息を吹き返したようだった。アバンドラーオに入るとさらに好調に。

エンリケは第二回カンテ・フラメンコ・フェスティバルが開催されたエスピエルから到着し、その前の晩はどうやら12月頃のブルゴスと同じほどの寒さだった様子。なお、そのフェスティバルではネネ・デ・サンタ・フェやアナ・ラ・ジージャのカンテが際立っていた。エンリケは声に影響はないと言っていたが、やはり少々の違和感はあり、彼の経験値とプロ意識から何とかカバーしていたように思える。

続いてはアレグリアスを披露。節の最後を歌わなかったり、コンパスの中で早めたり止まったりと、正統派とは言えないパフォーマンスだったかもしれない。終盤でやっと正統派へ戻り、ありがたい気持ちだった。

                                  *ニームのフェリアでのバーカウンターの様子

それに続くはカンテス・デ・レバンテ。タランタとカルタヘネーラを歌うが、観客と演者の心の繋がりのようなものは感じるに難かった。

リサイタルは熱気も高まり、休憩なしの通しとなった。ハイテンションのシギリージャの2つのレトラと、その日一番とも思えるソレア・ポル・ブレリアが続いた(特に1節目と3節目が秀逸だった)。

カルメン・レデスマはいつもの通りフィン・デ・フィエスタで舞台上に。そしていつも通り「偉大」であった。

その後リサイタル中にはパルメーロとして参加していたメンバーがそれぞれ舞台に上がり、クプレ・ポル・ブレリア、バンビーノの歌などを歌い、最後に今年ラテン・グラミーに最優秀フラメンコ・アルバム賞でノミネートされたカルメン・ドーラがローレ・イ・マヌエルのレトラを美しい歌声で、愛嬌たっぷりに歌い上げた。

                                           *カルメン・ドーラ、フラメンコ雑誌にて

色んな意味で「ちょうど良い、適当な」リサイタルだった。ただ、ご存知の通り、何が正しいか、適当かというのは抽象的で個人的な意見でもあるので、私は私自身の「真実」だけをここでは述べたいと思う。

 

概要:

2023514

セビージャ・ペーニャ・ツアー

ペーニャ・トーレス・マカレナ

観客約90

 

文:ホセ・カルロス・カブレラ・メディナ

訳:瀬戸口琴葉

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